【10】約束の場所


 リオンはギルディと約束をしたことがなかった。
 リオンは守る自信がなかったからだ。
 だから、これは自己満足。ただの我侭なのだ。
 本人はそれを分かっていた。

 死んでしまった後に、彼の望みを叶えようと思った。
 そう、彼に約束した。
 初めての約束。約束の場所にたどり着ければ、きっと何かが分かると思ったから。
 そう信じて。

 根拠も何も無いものを信じるなんて、今までのリオンには出来なかっただろう。
 ギルディと一緒に過ごした時間は短かった。
 けれど、リオンにとっては凄く大切なものだった。
 リオンの根源を変えてしまう程に。



 過去に栄え、滅びに向かう大陸。
 全体の規模は定かではないが、過去には大都市として繁栄していた場所のひとつに、ギルディを拾い育てた場所がある。
 情報としてだけ知っていた場所。
 ギルディから聞いた時は興味がわかず聞き流してしまったけれど。
 リオンはギルディが知らない裏の側面をよく知っていた。
 リオンの所属していた組織が敵視していたからだ。
 リオンはギルディの話を聞き流しながらも、疑問に思っていたことがある。
 どうして、外にいる人間と中にいる人間でこうも施設に対する見方が違うのか、ということだ。
 ギルディの話しの中には、孤児院に見立てた武装施設っぽい話は出てこなかった。
 ただ、生まれを望まれなかった子どもの捨て場所だと。
 そこで育ったものが、新たに生まれを望まれなかった子どもを育てる。
 ギルディの話からでは、運営者がいないだけで、何処にでもあるような孤児施設としか思えない。

 この矛盾は何処から起きるのか。
 リオンは考えた。色々考えて、考えて。
 そして、考えるのをやめた。
 考えたところで答えが出るわけではない。
 今から行くつもりだった場所だ。
 行ってみれば分かるだろう。
 自分の目で確かめればいいのだ。
 約束の場所で。



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