WORD
 
 
     0
 
 WORD―ことば。
 
 言葉を捜していた。
 何かを求めるために、何かを探していた。
 探し、歩いていた。
 それは、ボクだけではなかった。多いのか少ないのかは、分からなかったけれど、独りではなかった。
 しかし、旅は一人。
 誰かと会った。何度か出会う。誰かと別れる。何度か別れた。
 何かが起きて、何かが終わった。産まれた力、ナクシタモノ。作りあげたモノ。捨てたカタチ。
 
 多くのものを見て、沢山のことを知り、学びながら此処まで来た。けれど、まだ旅は終わらない。
 終わろうとしないから・・・。
 見つけた時が終わりだろうか。それとも、終わった時に見つけることができるのだろうか。何もわからない。
 
 
 それならば、“行こう”。
 誰かが、見つけて、『くれた』言葉に従って。
 確か、村にいた兄貴分だった男の言葉、だったはず。遠い昔に別れた一人。その人にとって、その言葉は捜しているモノではなかった。
 当人にとっては意味の持たない言葉、WORD。しかし、ボクにとって、オレにとっては、一生を変える言葉だった。
 
 
 オレは、自分の捜し求める言葉を知らない。
 
 
 言葉には、力のある言葉、意味のある言葉、力のない言葉、意味のない言葉がある。
 それは一人一人違うもの。
 与えることで変わること。貰うことで変わること。この中でオレは探す旅に出た。
 
 何時からか、忘れてしまった。
 何時までか、決めてないし、決まらない。
 誰かと会って、何かをしながら旅をして、WORDを探す。それは、今もしているコト。
 
 
 
     1
 
 ‘単語を入力してください’
 苛立ち、焦り。
   1109・・・・・ブー。    ダンッ・・・!!
 操作パネルをおもいっきり蹴飛ばした。八つ当たりだ。壊してしまえば、二度と扉が開かなくなる可能性があるというのに・・・・。
 幸いなことに、パネルは一瞬ぶれただけで、再び同じ表示を続ける。
 ‘単語を入力してください’
 と。
「・・・・・・・・・・・・レイ・アッシュ・・REI・ASSYU・・・・・違う、あぁ・・・。レイの奴、何が指示どおりやればひらくだぁ〜? わかんねぇーよ!」
 レキは既に亡き友人に向かって怒鳴り散らした。
(くそー、・・・んで、こんなことになるんだよ――!!!)
 
 事の始まりは、友人を訪ねたことから、数時間前のことだ。
 
 
     2
 
 レキ。
 個人名か種族名か。それともただの通り名か。レキと名乗る男が、この町、レイ・アッシュを訪ねてきたのは昼過ぎだった。
 彼は旅をしている。何かを求めて。何かを探すために。誰かと自分のために。
 その目的の分からない旅路に道は決まらず、手がかりを探して、町に入った。
 もともと知っていたことも確かだ。レイ・アッシュがこの町に定住を決めたことを。
 
 しかし、そこは町といえる場所ではなかった。

 人がいないのだ。

 犬も、鶏も、子供も大人も、生き物は何も見当たらない。否、生きたモノが。そこは、死体置き場としても酷すぎる死んだ町だった。
 
 
 この町がこうなったのは、単なる偶然と不運。
 偶然なのは、この待ちの近くで、町同士の争い、戦争があったこと。その流れ玉がひとつ、町外れに被弾した。
 不運とは、その流れ弾が、普通のものではなかったことだ。
 その玉は、殺傷目的のものではなく、戦争関係者たちから『死の灰』と呼ばれる有害物質をばらまくものだった。

 町民は苦しんで死んだことが窺える。
 近年、数が減っている共和主義の町だったそこには、防ぎようがなく、滅びるしかなかったのだ。
 
 
     3
 
 レイ・アシュは友人の訪問を予期していた。彼も、片足を失うまでは同じだったから。
 同じように何かを捜し求めて、旅をしていたから。彼はなくした足の変わりに、何を得たのだろうか。
 彼は、死を迎える直前に、言葉を残していた。
 それは、一枚の手紙だった。
 
 
   やあ、レキ。君が来るまで、ぼくはもちそうにない。
   だから、言葉を残すことにする。
   まず、封鎖されるであろう扉は、指示どおりすれば問題ない。
   この死の灰も、君にはあまり害はないだろう。これは作物を枯らし、土地を汚し、水を汚し、定住する者を、汚す、生きた 灰 だから。
   
   君が此処に来るということは、まだ、見つけていないんだね? まだ、知らずに分からず、ということか。
   
   ぼくは、君の答えを知らない。ヒントになるかも分からない。
   それでも聞きたいというのならば、東の外れの半島を目指してみてはどうだろう?
   なぜ、そこをすすめるのか。それは、ぼくが行っていないからさ。
   楽しみだろう?
   まだ見ぬ土地にいけるなんて・・・。
                        R.A 
                                       』
 
 
 それを読み終わった時、最初はむかついた。
 次に可笑しくなって、気がつくと笑い転げていた。
 何処か痛いと感じながら・・・・・。
 馬鹿にした台詞とか、変わってねぇーと思えて、そして、これが死を直前にした奴の台詞かー、とまた笑えた。
 そこに強がる姿も見えず、心が痛かった。
 だから、その言葉に従って、“東の外れの半島”を目指すことを決めた。そして、町の出口に向かった。
 
 その数分後、冒頭の事態に至っている。
 
 
     4
 
「わかんねぇー    ・・・・・、何が、指示どおりだよ!!」
 あいかわらず、操作パネルは同じ文字を表示し続けていた。
 ‘単語を入力してください’
 と。おもいつく言葉や数字は入力した。レイ・アシュの個人情報から、この町の特徴的な単語、言葉を・・・。
「え・・・・」
 ふと、気がつく。
 単語とは、何なのか。
 単語に意味があるのか?
 探す旅の信念に近い何かを感じた。
 意味があって意味がない言葉。力があるないは一人一人違って、だから旅をしている自らの境遇。
「単語・・・・タンゴ・・・・たんご・・・・・、単語。言葉・・・・・W、WORD」
 
 そして、入力した。
 
 沈黙。

 それは客観的には数十秒だったが、当人にとってはとても長い時間だった。
 
   ギギギギギギギィィィィィィ・・・・・・・・・・
 
 
 そうして、扉は開いたのだった。
「よし、しまるなよ。オレが出るまでしまんなよ〜」
 
 既に機能停止してしまっている扉に向かって、変なこと呟く。
 
「よっしゃぁ! 東の外れの半島だったなぁ。行ってやんぜぇ、レイ!」
 
 そして、レキと名乗る男は、町を後にした。
 
 
 
 
 
 
 扉が閉まっていたところに、紙が一枚。それは、誰かが誰かにあてた手紙だった。
 風が舞う。
 その紙を何処かへと運んでいく。少なくても、送ったものと、送られたものの場所ではない場所へ。
 
 風が舞う。
 その紙―手紙が裏返った。
 
 そこにも、何か書いてあった。
 
 何か、断片的な、言葉。
 
 
   たぶん気がつかないと思うけど、
   君には無理だよ。
   これに気がつかないんだから・・・・。
 
   気がつければ、まだ、救いはあったんだけどね
 
   君だけではなくて、ミンナ・・・・・。
 
 
   だから、ぼくも失うまで分からなかった。
 
 
 
 
 風が舞う。
 誰かと自分のために、彼は旅を続ける。


 WORDを探して・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
          END
 
  終わりました。

 なんだか微妙な終わり方ですが、『?』イベント唯一(!)の参加者、及び、タイトル 【真剣?キャラ「たまり場」】 の推薦者様への感謝の捧げものです。
 カノン様〜如何でしたか??
 暗くならないように頑張ったんですよ。これでも!
 ああ、企業秘密って言ったんですけど、学校の友人“姫”に一部先に読まれてしまって・・・・。

 すみません <(_ _)> そのあと、大幅に(?)改正したんで、違う作品ですよ、はい。

 本当にごめんなさい。 (言わなくてもいいこと?/・・・・あ!)
 
 で、内容のほうですが、難しかったですよ〜。

 リクエストの“WORD”なかなか思いつかなくて・・・・・。

 初めてでしたから、英単語のリクエスト。いや、勉強になっていいんですけどね、でも、でも、うぅぅ・・・・。
  なんだか続きがあってもよさそうな、終わり方・・・・・。
  自分の中のルールで、この続編ができる時は、再び、カノン様に捧げものを送る時か、キリリクをしてくれたときです、あくまでも、可能性ですが・・・。
  
  なんだか、本編よりも長くなってしまいそうな‘あとがき’ですので、この辺で打ち切らせていただきます。すみません、色々と・・。
 
 
 著作権は放棄しておりません。お持ち帰りしてもいいのは、カノン様だけですよ。
 カノン様、よかったらお持ち帰りください。
 それでは、大変長らくお待たせしました。  <(_ _)>