〔045〕不慮の事故
 
 
不慮の事故とは、よく言ったものだ。
 
 
兄が死んだのは、5日前の夕方だった。
 
でも、私が知ったのは、2日前の朝。その日もいつもどおりの朝を迎えていた。
いつもどおり。
 
父はゆっくりと朝食を食べ、母は朝食の後片付けをして、私は、ニュースを見ていた。
洗面所のほうから、ゴトンゴトントと、洗濯機の音がする。
 
いつも通り、変わらない朝。
 
こんな毎日は、2年前から変わっていない。
2年前は、兄がいた。
 
 
兄は、世間的には家出したことになっていたが、事実上、行方不明だった。
ある日突然、居なくなったのだ。
もともと、不良少年だった兄。両親は、居なくなってくれてよかったのかもしれない。
見つけたくなかったのだろうが、ここでも世間体を気にして、捜索願は出された。

結局、見つからなかった。
 
最初の数日間、私は可笑しいと訴えたが、聞き入れてくれなかった。

確かに、頻繁に帰ってこなかったりはしたが、今回は違うと訴えた。

だって、私はその日、兄と会う約束があったから。

兄は、不良少年だったが、約束は守る人だった。約束をした相手には、だが。

何かの理由でこられなかったときは、その次の日には謝りにきてくれる。そんな人だったからだ。
 
 
 
知った。
 
『樹深共孝也さんのお宅ですか?』
 
そう電話がかかってきて。

きみともたかや。これが兄の名前だ。

私は、みさと。樹深共美里。

父は、司(つかさ)で、母は、典子(のりこ)と言う。

母の旧姓は、遠山(とおやま)だったはず・・・・。って、今は関係ないか。
 
電話には、誰も出なかった。留守電に入っていたのだ。それを聞いたのは、私だった。
 
『警察の者ですが、樹深共さんのお宅ですか? 捜索願を出されていた樹深共孝也さんのことで、お話したいことがあります。帰宅しだい、ご連絡ください。』
 
 
『妹さん? 今からこられますか?・・・・・・・』
 
 
 
 
兄のことを言っているのだが、訳が分からなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
END
 
 
 
 
久しぶりの更新です。
如何でしたか? またもや続きます。しかも、前編後編にまとまりそうに無いです。
それにしても、ラストに登場人物のナマエを出すとは、・・・・・、ですね。
ところで、何処が不慮の事故???   え?
 
続きを気長にお待ちください。ではでは。





続編  048:独り言  5/9日アップ






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