〔048〕独り言
 
 
 
「何で・・・・・、分からない」

私は独り呟いた。
 
 
 
葬儀が終わった。
 
 
樹深共孝也。

一つ上の私の兄。

2年前から行方不明だった。

正確には、
2年前から10日前まで。

私は、
10日前に死んだことを、7日前に聞いた。

警察から電話があったので、確かめに行ったら、それは兄だった。

警察は、不慮の事故だと言った。

バイクに乗っていた兄は、大型トラックにはねられて重傷だったらしい。

事故から一週間後、死んでから3日後、身元が判明したという。
 
何故、1週間もかかったのか。
私は、漠然と疑問に思った。

遺留品には、母の旧姓、遠山(とおやま)の姓が入った、財布があった。そこからそんなにもかかるのか。

警察とはそんなものなのか。
私は確かめにいった。
 
 
「あの〜、樹深共孝也の妹の、樹深共美里ですが、兄の担当の人、居ますか? 聞きたいことがあるんですが・・・」
確めに行った場所、それは警察所だ。
 
「妹さん?」
 
「はい」
 
そして、疑問をぶちまけた。

何故、そんなにもかかったのか。

警察とは交通事故の人間を後回しにするのか。

何故、死ぬ前に分からなかったのか。

早ければ、助かったかもしれないのに。何故、助からなかったのか。


何故、死んでしまったのか。どうして、何故、自分の言葉がよく分からなくなっていた。

知らぬ間に、泣いていた。
 
「確かにその疑問はあっているよ。」
 
私の、感情的な訴えを、その担当の刑事さんは、ちゃんと聞いてくれていた。そして、
 
「でもね、僕たちは一所懸命に身元を捜したんだよ。孝也君・・、お兄さんは、身内の方が見つかれば、早く見つかれば、助かったかもしれなかったんだから・・・・」
 
そう、諭してくれた。
 
「・・・・・・・。」
 
決して暇ではない刑事さんは私の話を一生懸命に聞いてくれた。

確か、佐々木さんだったと思う。

私は、あとに思ったことだけど、当たる相手を間違えていたようだ。

本当に、佐々木さんには迷惑をかけてしまった。でも、そのおかげで分かったこともある。
 
それは、兄は、遺伝的に何と言うのか良く分からないけど、血液型以外に何かあわないと輸血できない“かた”があったというのだ。

だから、身内が見つかれば、助かったかもしれなかったこと。

これはあくまでも可能性だから・・・。

と、佐々木さんは、そう言葉を濁していたけれど。
 
そんな話は、初耳だった。
私は、よく献血にいく。

そんなことがあるなら、絶対に分かるはずだ。兄が特殊なら、私も特殊のはずなのに、どういうことだろうか。
 

「孝兄の、馬鹿。わかんないよ・・・・・。」

呟いた。
 
 
私は、兄が死んでから、独り言が増えた気がする。

本当ならば、兄に向けていた科白が、聞き手が居なくなってしまって、独り言となった科白。
 
最近は、両親とも話していない。

ショックを受けているようには見えないけど、会話が無い。

今日知った事実。これが真実なら。私と兄は血がつながっていないことになる。
 
 
もしくは、両親のどちらかが違う。
 
 
「絶対確めてやるから・・・・」

また、呟いた。
 
 
何故か、すべての原因はそこにあるきがしていた。

その時は、“すべて”の何が? とは、分かっていなかったけれど。
 
 
 
私は、後で後悔した。この時の決意を。
 
 
 
END
 
 
またまた、やっとやっとの更新ですぅ。
いや〜、続編ですよ、続編!!
しかもまだまだ解決しそうに無く?

このあとどうなるのか。
またまた気長にお待ちくだされ〜。

テスト10日前切って、ますます更新が遅くなりそうな今日この頃。


では。

 


050〕写真のネガ





戻る