〔050〕写真のネガ

注 本編は045〕不慮の事故048〕独り言の続きにあたる第三話目です。
 
 
 
兄、樹深共孝也(きみとも たかや)の部屋を整理していた。

遺留品として、残しておくもの、捨ててしまうもの。

それらを、率先してやるといったのは夕べのことだった。


あいかわらず会話がなかったが、唐突に母、樹深共典子(きみとも のりこ)が言った。
「孝也の部屋、業者にでも頼もうかしら・・。」
っと。
その言葉に、頷きかける父、樹深共司(きみとも つかさ)を見たとき、私、樹深共美里(きみとも みさと)は声を上げていた。
「私がやるから!」
っと。
 
 
そして今、実行中。
何故、両親そろって死んだ兄のものを他人なんかに任せようとするのだろうか。

たとえ、
2年間家出していた上の事故死でも、もう少し、なんていうか、悲しいとか、ないのだろうか。
最近、佐々木さん(警察の人の人)と話して以来、何かと不審に思えてしょうがない。

ただ、その理由が、また、不純なようで。

確かなものと知ったら、兄貴の血液が特殊なことだけだからまた、もどかしい。
そんなことを考えながら、手を動かしていた。

確めてやる! と決意したものの、如何すれば分かるのか。

私は早速壁にぶつかっていたから。
 
なんだか、整理というより掃除だな〜、と埃だらけになっている部屋を見る。

家出してから母さんは掃除してなかったんだ、と。

私の部屋は頻繁にしに来るくせに、と膨れてみる。
そういえば、兄貴は何時から不良っぽくなったんだろう?
ふと、全然兄貴のことを知らない自分を思い知った。

髪を染めたのが何時なのか。

授業をサボりだしたのが何時なのか。

学校に行かなくなったのは何時なのか。

煙草をすいだしたのは? お酒を飲んでいたのは? バイクに乗ってたのは?

何時から??


分からなかった。

分かるのは、既になっていたこと。

髪は金髪で、学校に行かず、遊んでいて。

たまに行ってもさっぼって授業はめったに受けず。

たまに受けているといえば、煙草をすったり、お酒を飲んだり、教室でしていたとか。

そのために母さんはしょっちゅう学校に呼び出されて・・・・・。

そして、夜はバイクでどこかに行っていた。

すべて、既に出来ていた形。

そんな兄貴を近所の人は怖がっていたが、私はぜんぜん怖くなかった。
外見だけで、中身は変わってないことを知っていたから。
ちょっと前は、真面目で、成績も、上の中ぐらいいいほうで、母も自慢していた。
 
 
何時変わった? 何故?
 
 

悩み過ぎて、頭痛がしてきた。だから、大の字になって、部屋の中心に寝転ぶ。

兄貴の部屋。

2年前まで、兄貴がいた部屋。

今はその主をなくして、寂しそうに見えた。
 
何気なく顔を動かすと、何か、ベットの下にあるのが見えた。興味本位で引っ張り出す。
 
それは、写真だった。

2枚の写真。
「かわいい・・・・・」

1枚めの写真には、兄貴の小さな頃の写真。それを見て、含み笑いがこぼれた。

傷だらけになって、遊んで、それでも遊びたりないという顔。

そんな子供を抱え込むように抱く女性。母さんだろうか? 顔の部分が、色あせてよくわからない。

和服のようだが、何処で取った写真だろうか?


そして、2枚目。私と、父さん。

私はパジャマらしき姿で、父さんは、スーツ姿だ。

昼間のようだが、会社にいるような服装で会っている。この日は何かあったんだろうか・・・。

そんなことを考えながら、眺めていて、気づいた。

この、兄貴が写っている写真の女性は、母さんではないことを。

母さんは、足が悪い。子供の頃からそうらしい。

だから、こんなふうにしゃがむ時は、変に捻らないといけないはず。なら、誰なんだろうか?
 

さらに、ベットの下を探してみると、そこに、フィルムがあった。埃をかぶっていたが、まだ現像できそうだ。

早速現像してみよう。

私は、部屋の整理をほったらかして、写真屋に向かった。これが手がかりになると思ったからだ。
 
真実、重大すぎるものだとは、その時は想定もしていなかった。
 
 

END
 
 
 
あとがき
    
終わりました〜♪
いや、まだ終わってないんだけど、・・・・。第3話目、如何でしたでしょうか?
本編はまだまだ続きそうです。やっと次は後半戦? いえいえ、まだ前半戦だったり?
難しいです〜どうやってきりそうか?とかですね〜。最後の決まっているんですけど〜(笑)
    
頑張れ、美里ちゃん!
    
次回をご期待ください。では。
 



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