【1】風の行方
荒野に風が吹いていた。
過去に栄えた大陸。
今は滅びに向かっている。
人は、それでもたくましく、あるいは、滅びていることすら実感無しに、日々を過ごしている。
既に過去を知るものは無い。
今。
それが人のすべてであり日常なのだ。
過去に交流があったとされる異大陸の存在を、知る人間はほとんどいない。
「風が吹いてきたね」
防寒具に身を包み、くるくるとその場で回りながら。
「風って自由なのかな?」
少年は続けて言う。
「でも、束縛されてる気もするなぁ・・・」
くるくると、空を見上げながら。
夕日が沈み、朱の色を忘れたかのように残した空の色。
赫くて綺麗だなあ・・。と思いながら。
「何で、風は自由って言ったんだろう・・・、ね?」
少年は少し離れたところに佇む人に声をかけた。
微かに笑いながら。
佇む人。
彼は無表情に言った。
「不必要な情報は忘れることだ」
少年は回るのを止め、けれど微笑みは絶やさずに。
否、泣き笑いのような微笑で。
「・・・そうだね」
と、呟いた。
けれど少年は決意した。
終わったら、風の行方を捜しに行こう、と。
少年の名は、リオン。
【2】残酷な言葉